<日本をインド化するフランス人> つづき


はたしてシルヴィは日本に何をしにやってきたのか・・・
「ブトーよ。」    彼女は言った。


彼女は日本の暗黒舞踏に魅せられ日本にやってきた。
シルヴィだけでなく、長屋に住む他の外国人たちもそうであった。
彼女たちは皆20代後半から30代後半、
海外旅行の豊富な経験があり、
実はインテリであるのにそれを隠している、といった共通点があった。
お金はそれぞれがかせぎ、長屋のちかくで稽古をし、時々舞台に立つ。
60年代のヒッピーのような生活である。


ガイジン長屋の住人たちとも親しくなった高野さんは
ここでの会話(もちろん英語)についていくのが大変。
高野さんが目指す地球人(国際人)である達人者たちと
ツーカーで話している!という感動のど真ん中で
「どーしよー。わかんね〜」とあせりながら、
笑顔で「イエス イエ〜ス」と談笑する高野さん。
ワタシはここが一番すき!^0^


もちろん彼らの舞台にも招待されるのだが
高野さんには「暗黒舞踏」のおもしろさがわからない。

だが、なにしろ、達人たちが修行を重ねた上で演じている芸術である。
「なにかすごいことにちがいない」と思う。
でも、やっぱりわからない。
                            〜本文より〜

困り果てた高野さん。
彼女らに感想を聞かれておもわず
それらしいことをヒネりだした。
すると「あなたわかってるじゃない!」
さらに達人たちが高野さんににじりよる。
その後も舞台を見るたびに、
「予期しない恐怖と抑圧・・・」 「人生の歯軋り!」・・・
と頭をひねって感想を準備するハメになる。
・・・・・
この本には、そんな高野さんとシルヴィたちの毎日がつづられている。
さて、彼女らが日本に求めたものはなんだったのか。
それは手に入れることができたのだろうか。
その後、彼女たちはどうなってしまったのだろうか。



以下 ネタがばれてしまいますが・・・


アートをしながらも、現実食べて生きていかなければならない。
ホステス業をしながら東京で暮らし続けていたシルヴィだが
どんどんとやせほそり、ついにはパリに帰ってしまう。


2年後に、高野さんとシルヴィはパリのアパルトマンで
再会することになるのだが、そこでのお話もとても素敵。


2年前のあの長屋で・・・世界中の話をした。
あのとき、無理をしていたのは高野さんだけではなかった。
実はシルヴィも「達人」を演じようと必死だった。
リラックスしたふりをして、そのアンニュイな顔のうらで
彼女自身もピリピリしていたのだった。


でもパリに帰ってきた今、シルヴィの顔はとても安らかで幸せそう。
結局、「達人幻想」は消えて
高野さんはハッピーエンドの悲しさを味わうことになったのだった。

                           〜完〜