フランス人、中国人、イラク人、コンゴ人・・・
高野さんには、本当にいろんな国の友達がいる。


今回紹介された8つのストーリーの中で、
私は特に
第一章 日本をインド化するフランス人
第三章 スペイン人は「恋愛の自然消滅」を救えるか!?
が気に入っている。
どんなお話だったか、すこ〜しご紹介したい。


<日本をインド化するフランス人>


高野さんは大学2年生のとき、
電車の中で一人のパリジェンヌに出会う。
20代後半か30歳ぐらい、
茶と金色のまざった短いカールヘアで
着崩れた古着のような服を着ていたが、
それがまたさまになっている。


高野さんは、当時アフリカのコンゴ
謎の怪獣「ムベンベ」を探しにいく準備をしており
そのためにはフランス語(コンゴ公用語がフランス語)
が必要なのだった。
初めてのインド旅行から帰国してから間もない高野さんは
勇気をふりしぼって彼女に声をかけ、
彼女に自分のフランス語の先生になってもらうことに成功した。


フランス語のレッスンは彼女の家で行われた。
八王子の北のはずれ、「ガイジン長屋」に彼女は住んでいた。
築20年は軽く超えた平屋が何軒も続くその一体に
彼女や他にもたくさんの外国人達が集まって生活しているのだった。

さすがパリジェンヌ、住まいのチョイスも渋い。   〜本文より〜

彼女の名前はシルヴィといった。


さて、授業だ、という時になって高野さんはおどろかされる。
基本的なあいさつをしたあと、シルヴィ先生がハタと止まったのだ。
「うーん」とうなって上を見上げ、
長い脚をドーンと前に投げ出し「あーあ」とあくびをしている。
シルヴィ先生は授業をしない。
「適当にフランス語で話してみてくれる?」
これが彼女のレッスンだった。


高野さんは自分のことを話した。
大学の探検部に所属していること。
アフリカ「コンゴ」に、怪獣「ムベンベ」を探しにいく予定であること。
すると、シルヴィ先生はとたんに「フムフム!」と興味深そうに
体を乗り出して、高野さんの話を聞き始めた。


高野さんは興奮した!
今まで、友だちや先輩にこの話をしたときは
大笑いしてバカにされたり、あるいは「夢があっていいね」と
気味悪がられていたのだった。
しかしシルヴィ先生は、ごくごく真剣に高野さんの話に興味をもち
熱心に話を聞いてくれた。



日本ではコンゴがどこにあるか、
そこから説明しなければならないのに
シルヴィは「コンゴはどこから入るの?ナイロビから空路で?
陸路だったらザイールかガボン中央アフリカだね」
とめちゃくちゃ詳しい。


〜中略〜


これが世界基準か、と私はいたく感動した。
やっぱり世界を旅して、今日本でアートをやっているパリジェンヌは
おれのバカな友だちとはちがう。彼女はちゃんとわかっている。
そして、その彼女と”ツーカー”でやっている自分・・・

というふうに私は舞い上がった。             
                              〜本文より〜

[高野シリーズ]4へつづく・・・