タクシーの運転手さんと

韓国で「竹島」問題、中国で「歴史教科書」問題、
連日メディアでピリピリしたニュースを目にします。
ここ、のんびりノンサンであっても最近は
タクシーに乗ると、運転手さんに「日本人か?」ときかれたり、
時々、竹島のことや歴史教科書問題のことで意見を求められたりします。


一人、めちゃくちゃ怒っている運転手さんにあたって
「むかつく!おかしい!理解できない!」と
車内で大きい声で叫ぶので黙り込むしかありませんでした。
「あなたに怒っているわけじゃないんだけどね。」って
降りるときにフォローを入れてくれたものの
それからずっと、気持ちは曇ってモヤモヤしたままです。


・・・・・・・・・・・・・
昨日、Yさんの送別会で9時過ぎまでソウルにいました。
10時過ぎの列車に乗り、ノンサンに着いたのは0:30過ぎ。
すでにバスはない。タクシーに乗るしかない。
駅前で「タクシー乗るか?」という運転手さんに、
声は発さずに、顔で「うん」とうなずく。


最近、いろいろ言われて心が疲れてるねん。
 お願いやし、悲しくなるようなこと言わないで。  
 これ以上、「韓国から日本に帰りたい」と思うようなことは
 体験したくない。 



正直、そんな祈るような気持ちでタクシーのドアをあけ、
同僚のO先生と一緒に乗り込んでバタン。
「チョンソルアパートエ カジュセヨ・・・」(弱弱しい声で)行き先を告げる。
バックミラーごしに、運転手さんがチラッと私たちの顔を見た。ドキドキ・・・


タクシーの運転手さんはよくラジオを聞いている。
日本関連のニュースが聞こえてきたときに、
(わざとなのか何なのか)ボリュームをあげたりする人にも何度か会った。
(最近では、タクシーに乗ると日本人同士、車内で日本語をあまり話さない。)
自分でも敏感すぎると思う。
気にしすぎなのかもしれないが、
ラジオがニュースではなく、音楽番組だったのでホッと安心。


そう思った時
「우리나라 사람 아니죠?」  (韓国人じゃないでしょう?)
と運転手さんがこちらを見て口を開いた。
あ・・・あい。あう。しばらくモゴモゴした後、
「네」(はい)  と私が答える。
「어느나라 사람이에요?」 (どこの国の人?)
・・・・・
「일본요.」(日本です。)




何か言われるか。・・・そういう覚悟をした。
はやく着いてほしい!はやくタクシー降りたい!・・・そう思った。
その時






「おれ、おれ、ペヨンジュンなんだけど。」
・・・
え?
・・・
「ヨンさま! わはは」
・・・
あ、はい。ヨンさま
・・・
「ヨンさま 好き?」
・・・
いや、それほどでも。
・・・
運転手さんの顔をみると、全然ペヨンジュンではないけれど
なかなかのハンサムで、30歳ぐらい。
青いジャージ(上下)に身をまとっている。
・・・
「あららん、二人は恋人なの?」
・・・
同僚です。
・・・
「いま、日本から来たの?飛行機?」
・・・
え、いやいや。1年前からいます。
・・・
「なに、飛行機ってどうなの?」
・・・
飛行機ですか。はい、まぁ、きれいでした。
・・・
「おれ、飛行機乗ったことない。」
・・・
「こわいよ。落ちたら終わりでしょ?」
・・・
そうですかね。
(兄さんは、「おれ飛行機に乗ったことがないからなぁ(照)」ではなく
 「おまえら勇気あるよなぁ。」あるいは「飛行機乗るなんてどうかしてるぞ?」
 ってなノリでした。)
・・・
「ともだちのお母さんが日本に行くの。」
・・・
へー、日本のどこですか。
・・・
「知んない。でね、でね、」(うれしそうな顔で)
・・・
「おれ仁川空港行くんだー!!」 ニコニコ
・・・
(乗るのは嫌だけど、飛行機が好きらしいです。)




そんな話をしているうちにアパートについた。
夜中になると、料金多めにとる運転手さんも多い中で
「3000ウォンでいいよ〜」
降りる直前に上がった分をまけてくれた兄ちゃん。
・・・
ありがとう!ありがとう 兄ちゃん!
「韓国のタクシーの運転手さんは・・・」なんて価値観を押し付けてごめん。
心をコチコチにしてた。視野が狭くなってた。
あー、ほんと。ありがとう お兄ちゃん。